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コッツビュー再訪 ⑶

海辺にぽつりと立つ小さな家へと続く道には足跡もなく、ひっそりと静まりかえっていた。ボートやバギーの上には厚い雪が被っていて、長らく使われていないことが分かる。半年前はけたましく吠えていた白い大きな犬もいない。 私は心の片隅で何かとてつもなく悪い予感を抱きながら、彼の家へと近づいた。 ポーチには食べ残しのゴミ、防寒着、釣り竿などが乱雑に

コッツビュー再訪 ⑵

3月のアラスカは、長かった冬がようやく終わるという前向きな雰囲気に包まれている。 子供たちは嬉しそうにダウンジャケットを着込んでリュックを背負い、大人たちは車で学校まで送り届けた後、職場へと向かう。ハーマンはいつものようにテレビをつけ、サーモスにいれた熱いコーヒーをすする。私は遅い朝食を食べた後、窓の外を見た。真っ青な空と真っ白な雪が

コッツビュー再訪 ⑴

どこまでも続く真っ白な地平線のなかに、小さな点が見えてきた。 上空から見るその町は、まるで地球という大きな顔にできたホクロのようだ。 飛行機の窓に押し当てた額がひんやりと冷たい。 点が少しずつ大きくなっていき、形をつくりはじめた。いくつも並んだ風車が見える。 戻ってきた——。 たった半年前の事なのに、なぜか遠い昔のことのように思える。それ

Hopeless : 極北の消えるルーツと若者たち 序章

チャック・シェイファーはいつものようにコーヒーをすすりながら、本棚から読みかけの本を手に取った。彼はボートから置き網を垂らした後、サーモンがかかるまでの間キャビンに戻り、決まってそうして時間を費やしていた。 しかしその日はいつもと様子が違うことに彼はすぐに気がついた。 チャックは顔をあげ、窓の外を見た。網の様子がおかしい。水面に大きな

Hopeless : 極北の消えるルーツと若者たち 第一章 アラスカとの出会い

アラスカ北西部の町、コッツビュー。北極圏内に位置するこの小さな町には3000人の人々が暮らしていて、地域一帯のハブとして機能する。人口の8割ほどはイヌパック・エスキモーと呼ばれる先住民族エスキモーの人々だ。 「最後のフロンティア」と称され、ゴールドラッシュに沸き、本土から一攫千金の夢を求めた白人が流入してから100年以上が経つ。 この地には何千